<< 2007年07月
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

いよいよ最終回です

2007/07/04 23:51

 

 連載企画「知はうごく」も、7月4日付で最終回となります。これまでお読みいただいた皆様に感謝申し上げます。今回は、半年間の連載を振り返り、われわれが考えてきたことや、企画の方向性が定まるまでの裏話を紹介します。


 ■「知的財産」というテーマをどう描くか? 昨年11月ごろから取材班で議論を重ねましたが、対象となる領域が広く、方針はなかなか固まりませんでした。
 私(上野)が真っ先に思い浮かんだのは、特許とか知財権紛争(裁判)でしたが、「それでは内容が堅苦しくて一般の読者の方々に読んでもらえない」との意見が大勢でした。そこで第1部は、身近な音楽、映画、小説、漫画に関連する「著作権」をテーマに取り上げました。

 ■また、インターネットとの連動については、取材班のリーダーである谷口正晃記者が強力に推進しました。イザ!ブログでもおなじみの谷口記者は、かつてシリコンバレー駐在経験もあるIT担当記者で、新聞とネットの融合に向けてさまざまなアイデアを抱いています。「知はうごく」で、アイデアの数々を実現しようとの意気込みでした。

 ■その第1部で予想以上に多くの反響をいただいたことから、第2部は第1部の延長戦として「コンテンツ産業」をテーマにしました。第1部と重複する部分が多いため、旧来の新聞編集の感覚なら類似のテーマは避けたかも知れません。しかし「知はうごく」はネットとの融合を目指しているため、読者の関心が高く、よく読んでいただけるであろう話題を最優先にした次第です。取材班メンバーには、「第1部で書ききれなかったネタをもっと伝えたい」という思いもありました。

 ■第3部のテーマは「デザイン・ブランド」。知財権の分類としては意匠権と商標権になりますが、単なる法律的な権利にとどまらず、「日本ブランド」という大きな枠組みで知的財産を捉えようと心がけました。一方で、人々の感性に訴えるビジネスの現場にも迫ろうと努めました。面白い切り口で提示できたと自負しています。
 また、連載開始前からの懸案だった中国取材を第3部に向けて敢行しました。中国特許、意匠、商標、著作権のいずれについても多くの問題を抱えていますが、「ファッション」と「日本食」というユニークな視点で中国の現状を紹介しました。第4部で取り上げた上海での模倣品摘発現場も、この時に取材したものです。

 ■第4部は、最終編ということもあって、「特許」「中国など途上国の知財侵害問題」「日本政府の知財戦略」「知財人材育成」などを包括的に描こうとしました。このため、新聞紙面では1面の狭いスペースでなく、経済面に広いスペースをもらって展開しました。1~3部で取り上げられなかったテーマを“寄せ集めた”感もありますが、それなり読み応えのある構成にできたと思っています。

 ■ここからは内情の暴露と愚痴&反省です… 当初は「大型連載企画」と銘打って、経済、社会、文化部を横断した取材班が発足したにも関わらず、それぞれ部内の事情もあって1人抜け、2人抜け…第4部はほとんど2人だけで書くことになってしまいました。残された私などは「こんなはずじゃなかったのに」と複雑な思いを抱くとともに、当初掲げたインタラクティブ(双方向的)な取り組みを十分にできず、読者の皆様の期待に応えられなかったことをとても心苦しく思っています。取り組みが中途半端だった部分については、申し訳ありませんでした。

 ■しかし、私たちにはたくさんの成果がありました。読者の皆様との双方向性を志向した今回の取り組みは、近い将来、さらに発展させられると確信しています。また、動画推進室の中井誠記者、後藤徹二デスクとともに映像ニュースの充実を図り、産経WEB上でこれまでにない本数と質の映像を提供できました。撮影、編集も含め、貴重な経験となりました。そう遠くないうちに、第2の「知はうごく」的な取り組みができれば…谷口記者とともに思いを巡らせています。
 連載は終了しますが、これからもこのブログや「ご意見フォーム」を通じてご意見、ご感想をお寄せいただければ幸いです。  (上野嘉之)

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(1)  |  トラックバック(1)

中国当局が模倣品を摘発! 現場のスクープ映像&写真

2007/07/03 23:24

 

 新聞記者は、事件の現場に遭遇するとアドレナリンが噴出し、「伝えたい!」という使命感に駆られるものです。今回、「知はうごく」の中国取材でそんな現場に出くわし、久しぶりに鳥肌が立つような興奮を覚えました。

 7月4日付け「知はうごく」最終編・第2回(㊥)の記事で紹介しているように、今年4月に中国・上海市で、市当局が模倣品販売業者を摘発する光景を至近距離でカメラに収めることに成功しました。現場は、上海市内に昨夏オープンした大型商業施設「淘宝城」。中国のネット事情に明るい方ならお気づきかも知れませんが、淘宝城は中国のオークションサイト最大手「淘宝網」が運営するリアル(現実世界)のショッピングモールです。


◆淘宝城の入り口。ここにも写っているように、外国人観光客が多く訪れている


 取材した4月23日、私は現地事情に詳しいコンサルタントのアレンジで、上海市内の商業施設を3カ所巡りました。この日の取材目的だった模倣品海賊版は、最初に訪れた「融富百貨」と、2番目に訪れた「福佑門小商品市場」でさんざん見ることができました(というよりも、ブランド物の真正品は1つも見当たらなかった)。


◆「融富百貨」の入り口


◆融富百貨内の小売店の奥にある別室で密売されていたブランド・バッグの模倣品の数々


◆「福佑門小商品市場」の外観


◆みやげ物やキャラクター商品が雑然と並ぶ「福佑門小商品市場」の店内


 だから、3カ所目の淘宝城は、適当に流して引き上げるつもりだったのですが…

 淘宝城の建物に入ると、ザワザワと異様な雰囲気。中国語の会話の中に「AIC、AIC」という単語が聞き取れました。人だかりの方へ向かうと、制服を着た、いかめしい係官の姿が――。若いコンサルタントが「あっ、AICが入っている!」と叫び、やっと事態の深刻さが飲み込めました。AICとは、知財権侵害の取締り当局である「工商行政管理局」の略称です。

 係官は、カジュアル衣料を販売する2つの店舗へ2、3人ずつ入り、店内に吊り下げられたTシャツやトレーナーを床へ乱暴に放り投げ、山積みにして紐でくくって順に運び出しました。現場は、ロープや柵で封鎖することもなく、平然と摘発しているので、野次馬は店の入り口に足を踏み入れて見物している有り様。わたしもその中に紛れて、小型デジタルカメラで動画と写真を撮影しました。







(4日公開の動画もご覧下さい。 
http://www.sankei.co.jp/chizai/chizai.htm 


 われわれにはAICへの公式な取材ルートがなく、この摘発がどういう理由と狙いで行われたかははっきりしませんが、ただ、摘発が確かに行われていることや、それが氷山の一角に過ぎないことはよく理解できました。


 経済産業省特許庁JETROの知財担当者は、中国の当局が知財権侵害の摘発に熱心になったと口を揃えて評価します。それは、一面では当たっていることでしょう。

 しかし中国は、日本のように真っ当な業者がほとんどで不正業者が少ないお国柄とは違い、一部高級店を除けばたいていの小売店が違法コピー品を扱っている状況です。ニセモノが圧倒的に多い中で、知財を守るという感覚は皆無に近いと見受けられました。現在の摘発は焼け石に水に過ぎません。

 やはり、当局がもっともっと強権を発動し、違法業者を徹底的に追及していく方向に向かわなければ、ニセモノは無くなりはしまい――騒然とする摘発現場で、そんな風に強く思いました。  (上野嘉之)

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(0)  |  トラックバック(1)

「知はうごく」最終編(第4部)がスタートします

2007/07/03 00:26

 

 「知はうごく」の最終編(第4部)が、3日付け朝刊から(WEBでも3日から)スタートします。

 サブタイトルは「知財の時代を迎えて」。やや大ざっぱな表現ですが、連載企画の総まとめとして、知的財産の歴史や未来、世界情勢、そして知財を支える人々…などについて、大局的な視点で取材をしてきました。紙面では、これまでの1面掲載から趣を変え、複数の記事や写真3日間にわたって経済面で大きく展開する予定です。

 初回(㊤)は、あの青色発光ダイオードの発明対価訴訟で、原告の中村修二さんの代理人を務めた升永英俊弁護士に、知的財産時代の歴史的意義や世界情勢を伺いました。青色発光ダイオード裁判といえば、一審で200億円も認定され、二審では8億円で和解した発明対価の高額さに驚かされれたものです。しかし、升永弁護士はそうした金銭の多寡に執着することなく、あるべき知的財産制度を深く考察され、むしろ企業と発明者が共に栄える世界を思い描いていらっしゃることに感銘を受けました。

 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、

 ◇工業生産から知的財産へ、世界は今まさに富のルールの変換点を迎えている
 ◇米国企業では、入社時に発明対価請求権を放棄させられるが、転職や起業が盛ん。日本とは実情が異なる
 ◇日本の「職務発明制度」は、米国にはない優れた制度。運用次第で世界のスタンダードになる可能性がある

 …などが要旨です。
 独自の歴史観や世界観に裏付けられた、バランス感覚のある主張には何度もうなずかされました。

 もう一つの話題であるIBMの知財戦略は、谷口正晃記者が取材しました。知財を囲い込むのではなく、オープンにすることで利益を得る…という逆転の発想は、少し前に流行したWEB2.0的思考の源流なのかも知れません。それにしても、500件もの特許を一気にオープンにできるのは、IT界の“巨人”ならではと言えるでしょう。

 第2回(㊥)は、中国の知財権侵害のルポや、それに対する日本政府の取り組みを紹介。さらに、経済産業省の北畑隆生事務次官へのインタビューを通じて、政府の知財戦略の最前線に迫ります。

 第3回(㊦)では、知的財産高等裁判所の塚原朋一所長にインタビューし、発明か否かのボーダーラインの動向や、知財をめぐる開かれた議論の方向性を検証します。また、知財を支える人々として、弁理士の職務や、映像資産を守るフィルム修復家という職業を紹介します。(上野嘉之)

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(0)  |  トラックバック(0)

日産の高級車ブランド「インフィニティ」、中国へ進出

2007/05/09 00:17

 

9日付けの記事には、あのフェラーリやマセラティという超高級車のデザインを手がけた工業デザイナーの奥山清行氏が登場します。記事も自信作ですが、お勧めは、産経WEBにアップする「動画でみる『知はうごく』」です(http://www.sankei.co.jp/chizai/chizai.htm)。奥山さんへの独占インタビューで、イタリアのデザイン事情や、日本が進むべき道を熱く語っていただきました。ぜひご覧ください。

 

  ◇  ◇  ◇

さて、昨日(2つ前のエントリー)の続きで、私の上海見聞録を書かせていただきます。今回は奥山さんにちなんで、上海の自動車事情をご紹介します。

 

ちょうど私の滞在中に上海モーターショーが開かれていました。多忙で訪れることができなかったのですが、街の至るところにモーターショー関連の広告や垂れ幕が掲げられ、その盛り上がりは現在の東京モーターショー以上に感じられました。

 

街の中で見かける車は、日本ほどピカピカではなかったけれど、想像していた以上に新しい車が多く、近代的な印象でした。特に、ドイツの高級車アウディが多いのにはビックリ。日本では高級車といえばベンツBMWが幅をきかせ、最近はレクサスも増え、アウディを見かける頻度はその次くらいですよね。ところが中国では、どこへ行ってもアウディ、アウディ、アウディなのです。

 

これは、アウディの親会社であるフォルクスワーゲン(VW)社が、最も早く中国へ進出し、現地企業との合弁により生産・販売の基盤を築いたからです。つまりアウディは、中国の工場から出荷されている国産車なのです。ちなみに上海のタクシーはほとんどがVWのセダンでした。

 

中国人民の所得は増え続け、「年収1000万円以上の人口は日本より中国の方が多い」という話も耳にしました(真偽は確かめていませんが…)。消費市場が爆発的に膨張し、高級車市場も急成長しています。そんな中で、ベンツレクサスを引き離してアウディが独走していることは、フォルクスワーゲン社にとって大きなアドバンテージでしょう。今後、10年や20年はリードを保てそうなくらい、アウディとVWは浸透していました。

 

一方、アジア各地であれほど幅をきかせている日本車が、ちょっと劣勢なのにはガッカリしました。それだけ中国市場に進出するのは難しいものなのでしょうか?

 

  ◇  ◇  ◇

今回の中国訪問では、上海から北京へ移動中の空路で、上海モーターショーを訪れていた日産自動車の北京駐在員の方とたまたま隣り合わせになりました。

 

日産は今回の上海モーターショーを機に、高級車ブランドの「インフィニティ」を今年7月から北京などで展開すると正式発表しました。しかし実際には、ずいぶん前から準備を進めていたようです。

インフィニティは、トヨタのレクサスと同じように高級車専門の販売店網なのですが、日本ではまだ展開されていないし、北米でもベンツレクサスに水を開けられています。

 

私が出会った方は、インフィニティの立ち上げのため、中国人スタッフの教育などを担当しているそうです。込み入った話は伺えませんでしたが、日本の高度な整備技術やきめ細かなサービスを教えるのは大変だとのこと。しかし、そうしたサービスを実現してこその高級ブランドです。今夏のオープンに向けて、残された月日は多くないですが、万全の準備を整え、中国市場でインフィニティを成功させていただきたいと願っています。

 

インフィニティで販売する主力車種は、日本でも米国でも人気の新型スカイライン。日本を代表する名車スカイラインが、中国でどのように評価されるのかにも、興味がありますね。(上野嘉之)

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(0)  |  トラックバック(1)

ゲームで人生が変わった ~浜野保樹教授のインタビュー記事について

2007/05/08 00:48

 


知財取材班の上野です。

「知はうごく」第3部がスタートするタイミングですが、

第2部で紹介した浜野保樹・東大大学院教授へのインタビュー記事をめぐり、

( http://www.sankei.co.jp/culture/enterme/070320/ent070320001.htm )

特にゲームに関するコメント部分について大きな反響があったので、

取材班メンバーとして感想を述べさせていただきます。

 

   ◇   ◇   ◇

 

何を隠そう、私は大人になってからゲームにものすごくハマってしまった、

元ゲーム中毒者の1人です。

 

もう10年近く前のことですが、当時人気のゲーム機「プレイステーション」と、

人気ソフト「グランツーリスモ(GT)」を買い求めました。

GTは、一言で言えば自動車レースを疑似体験するドライブゲームですが、

リアルな操作感や、コンピューター・グラフィック(CG)の完成度で

それまでのゲームソフトの常識を覆した名作です。

 

もともとクルマが好きだった私は、その頃は自家用車を所有していなかったこともあり

休日や、帰宅後の深夜に、何時間もGTにのめり込みました。

妻からは「いい加減にしてよ」と呆れられ、

自分でも「こんな生活じゃダメだ」と感じたのですが、中毒のようにやめられません。

そんな生活が延々と続き、ゲーム中で登場するサーキット場のすべてで優勝し、

架空の「賞金」でさまざまな車種を集めるなどゲームを完全制覇したのですが…

 

それでも飽きたらず、ついに1年後、本物のクルマを買ってしまったのです!

1600ccの小さなオープンカーですが、

その後は週末にドライブに出かけるようになり、夫婦仲も円満になりました。

 

もう1人、私の友人の例も紹介します。

1998年のサッカーW杯の頃、友人はサッカーゲームにハマってしまいました。

朝から夜まで、ゲーム中の所有チームのことで頭がいっぱいになり、

どの選手を起用するか、どの選手をトレードに出すか、

あるいは次の試合のフォーメーションをどうするかなど、

通勤電車で手帳にメモを書きながら戦略を考え続けたそうです。

そんな友人は、今では政策の立案やPRに関する仕事に携わっています。

 

コンピューターゲームに費やす膨大な時間は、確かに無駄かも知れませんが、

プレーヤーに大きな感動や満足感を与えてくれるのも事実です。

私の場合、新車購入を決断する動機付けにもなりました。

間接的であれ、人生を変えられてしまったわけで、
そんなコンテンツにはなかなか巡り会えないものでしょう。

ゲームソフトが演出する世界は、実はものすごいパワーを発揮していると思います。

 

   ◇   ◇   ◇

 

浜野教授へのインタビュー記事が、ゲームを否定しているとして、

ネット上の掲示板やブログで批判の声があがり、

「知はうごく」のご意見フォームや、産経新聞の読者窓口にも

苦情や反論が寄せられました。


私は直接の取材者ではありませんが、
インタビュー記事の文脈をたどる限り、

浜野教授はゲームを全否定しているわけではないと思います。

ただ、日本国のイメージ、日本商品全体の広告媒体となる点で考えると、

ゲームは映画ほどの影響力を持っているわけではない…

ということを述べられたのだと受け止めています。
ゲームには心ふるえる感動や、敬意を払われる機会が少ないという指摘も、
コンテンツ産業の最高峰である映画と比較する限り、的外れとは言い切れません。
(それでも、車を買わせる程の影響力はありますが)


それなのに、浜野教授の長いコメントの中から

「ゲームについては、ぼくは異論がある…」以下の部分だけが切り出され、

そこだけが独り歩きして論評の対象となり、

浜野氏への批判とともに流布されたことは、心苦しく感じています。  (上野嘉之)

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(2)  |  トラックバック(0)

日本のファッションが中国に追い抜かれる日

2007/05/07 22:31

 

知財取材班の上野です。

長らく更新をサボってしまい、申し訳ありません。

 

取材メンバーの一部が異動・担当換えとなり、

取材態勢が整わなかったことなどから、更新が滞ってしまったのですが…

これも私たちの不徳の致すところ。

日記やブログというものは、一度億劫になると、なかなか書けないものですね…

きょうから心を入れ替えて更新していきますので、よろしくお願いします。

 

いきなりですが、「知はうごく」第3部があす8日朝刊から連載されます。

ネットでも同時にスタートします。
(※追記:アドレスです。http://www.sankei.co.jp/chizai/chizai.htm)

第3部のテーマは、日本のデザイン・ブランド戦略。

ファッション、地場産品、工業デザイン、農産品、食文化などを題材に、

日本が世界で勝負できる分野や商品・サービスを探り、

政府や企業・生産者が取るべき方策を考えました。

 

特に今回は、ファッションと日本食文化について、お隣の大国・中国の事情も探ろうと、

私自身が上海と北京を訪ねてきました(中国は初訪問でした!)。

これから取材班のブログで数回にわたり、

中国で見聞きした様子を紹介していきたいと思います。

 

 

さて、企画第3部の最初の題材でもあるファッションですが、

中国、特に上海市のファッション事情は、日本のレベルに急接近しています。

 

まず、ネットの記事でも紹介しますが、RayViVi25ans、Oggiなど

日本の女性ファッション雑誌の中国版が、市内の至る所にある雑誌スタンドで

当たり前のように並んでいます。

ファッション感度が高い女性たちは、
長谷川潤さんや土屋アンナさんら日本の人気グラビアモデルの顔や名前も

詳しく知っているそうです。

 

これは日本アパレル産業協会でクリエイティブ・ディレクターを務めている

加藤木安美子さんからうかがった話ですが、

日本ファッション協会が開設している、ストリートファッションの定点観測サイト

Tokyo Street Style」(http://www.style-arena.jp/)ではここ数年、

中国韓国台湾からのアクセスが急速に増えているそうです。

加藤木さんは「情報は世界同時発信の時代」と強調しています。

例えば、数年前には、中国や東南アジアは原色系の色使いが多く、

日本はモノトーンなど落ち着いた色調が好まれる…などと言われていましたが、

そんな違いもなくなりつつあるそうです。

 

中国の百貨店の品揃えは、もはや日本と差がありません。

私が訪ねた「上海梅龍鎮伊勢丹」には44もの日本ブランドが進出し、

ちょうど日本の「オンワード樫山」のフェアも開催されていました。

しかし森田章文総経理は、注目ブランドとして、
オンワードの「rosebullet」(ローズブリット)と共に
中国人デザイナーが手がけた
「DECOSTER」「JEFEN」という
2つの新進ブランドを挙げました。

特にJEFENはパリコレにも出展しているとのこと。

中国のメーカーやデザイナーズ・ブランドは急速に力をつけているようです。

 

上海の街で出会う女性たちも、日本と差がないくらい

お洒落な人が多いように思えました。

ある日、女優の伊藤美咲さんにそっくりの女性と出会ったのですが、

ブラウス、スカートから靴、傘まで完璧なコーディネートで

思わず目を奪われてしまいました。

(その女性は、後からきた男性と腕を組んで颯爽と立ち去りました…)

中国人の風貌は、日本人と似ている(というかあまり違いがない)ため、

余計に差がないように感じたのかも知れません。

 

長々と書いてきましたが、つまり中国では、

ファッションに関する情報も、品揃えも、女性たちの装いも

どんどん日本に近づいているんだなぁ、と実感した次第です。

 

ファッションに詳しい人の話では、

日本のファッション界の方が数段洗練されているし、

消費者の着こなしやメークのレベルも高く、

中国は模倣している部分が多いとのこと。

それに、中国でファッションにお金をかけられる人は、まだまだ限られているし、

商品単価や客単価も日本より低いようです。


しかし、今の勢いで中国13億人市場が爆発的に成長し、

女性たちが美しさやお洒落への関心を高めていけば、

少なくともファッション市場の規模で、

日本を追い抜く日は遠くないような気がしました。

 

ちなみに、これまで女性についてばかり書いてきましたが、

男性も状況は同様です。

地下鉄で出会った若い男性は、私が買えないような高価なスニーカーを履き、

最新のiPodで洋楽を聴いていました。

男性の茶髪やアスも当たり前。中には、ジャンパー姿でリュックを背負った

オタク風の青年がいることも、日本に近いなぁと感じた一因です。

 

私は、東京から着ていったジャケットが何となくみすぼらしく感じてしまい、

上海の百貨店で新しいジャケットを購入しました。

中国の見知らぬメーカー製で、価格は1万円ほどでしたが、

日本の百貨店の商品に見劣りしないと思いました。

 

唯一、日本との差を強く感じたのは、店員のサービスです。

中国の店員は、特別不親切というわけではないけれど、

客に素っ気なかったり、逆に売り込みが激しかったり、

あるいは店員同士でペチャクチャとおしゃべりしていたり…

日本の百貨店の上品で洗練されたサービスを知っていると、

ちょっと物足りない気がしました。  (上野嘉之)

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(0)  |  トラックバック(0)

アニメーターと初給与

2007/03/14 23:41

 



「初めてもらった給料が2万5000円だったことは覚えています」


アニメーターの竹内志保氏が示した金額を聞いて、
コーヒーをこぼしそうになりました。
「ひと月に?」
今年40歳を迎える竹内氏は大きくうなずきました。

 

20年近く前の金額ではありますが、
日給8000円のアルバイトを3日すれば、ほぼ同額です。
よくも続けたものだと感心していたら、
一度はアニメーターを辞めて故郷の九州に帰っていたそうです。

 

しかし、竹内氏は再びアニメ業界に戻り、
テレビ放映された「ラーゼフォン」でメカニカル作画監督を務めるなど
着実にアニメ道を歩んでいます。

 

連載の原稿にその金額を書いたあと、ゲラ刷りの段階で悩みました。

 「一例にすぎない」と書き加えようか、「20年近く前の話」と強調しようかと。
この金額を目にしたアニメーター志望者が、
がっかりしてあきらめたらいやだなと心配になったからです。

 

新人の動画マンは安いギャラに甘んじているようですが、
作品づく
りの中核となる原画マン、さらに作画監督へとステップアップすれば
待遇は良くなります。(動画マンにはベテラン専門職もいて、
地位の上下はいちがいに言えませんが)

 

結局、ゲラに手を加えませんでした。

帰宅途中に「週刊SPA!」の今週号(3月20日号)を読んでいたら、大特集「『好きなことを仕事にしたら…』こうなった」でアニメーターの話を見つけました。

 

30歳女性の実態が描かれています。詳しくは同誌をお読みいただくとして、
思い出したのは日本動画協会のウェブサイトです。
松谷孝征理事長のあいさつが載っています。

 

「アニメーション制作現場の現状は
夢を創りあげるにはあまりにも夢からかけはなれた状態にあります」

  

業界内では「アニメーターの出来高制をやめて正社員にすればいいのに」
という声が一部ありますが、
竹内氏は「正社員になったら若手アニメーターは安心してしまい、
働かなくなる」ときっぱり言います。

ひたすら枚数を重ねてこそギャラも増え、画力もアップする。甘えさせてはいけない。
そんな風に聞こえました。プロとしての覚悟でしょうか。

 

冒頭の話は14日付「第2部 コンテンツ力②」に掲載しています。

 

同じ回に、国とアニメ業界が初めてタッグを組んだ「アニメーター養成プロジェクト」の
インターン実習生が登場します。
 

2度にわたる試験を突破し、インターンシップの座を勝ち取った人は、どんな思いで実習に臨んでいるのだろう。そのひとり、高倉香恵さんの「目」が能弁に語っていました。
中井誠カメラマン(写真報道局動画推進室)による動画でじっくりごらんいただけます。

 

実習生11人のうち3人は、実習先の制作会社に正式採用が決まりました。
「コンテンツ立国」を最前線で支える新たな一員の誕生に、エールを送りたいです。

 

(社会部 市川雄二)

カテゴリ: エンタメ  > コミック・アニメ    フォルダ: 指定なし

コメント(9)  |  トラックバック(1)

データがない! …それで国策なの?

2007/03/13 23:50

 

お待たせしました、第2部の連載がようやくスタートしました!

第1話の「漫画」は、パリの山口昌子特派員に、パリの日本漫画市場の取材をお願いしました。
特派員の業務は多忙なので、われわれ取材班の“発注”は迷惑かも…なんて考えていましたが、
山口記者は恐らく1日がかりで、パリの漫画コミュニティーを丹念に取材し、
詳細な長文原稿を送ってきてくれました。
取材班にとっては嬉しい誤算であり、山口記者に感謝しているところです。

イザ!では要約した記事を掲載していますが、
パリ発のオリジナルの原稿は、パリの複数の写真とともに、
産経WEBの特集ページに掲載しています。
こちらもぜひご覧になってください。

   ◇   ◇   ◇

ところで、今回の「漫画」の取材では、思いがけない障壁にぶつかりました。
コンテンツの国際展開がメーンテーマなのに、漫画の輸出統計がなかったのです。

コンテンツ産業の振興を図る経済産業省にも、外交を司る外務省にも、
貿易統計を所管する財務省にも、出版業界の統計を扱う出版科学研究所にも、
どこにも「漫画」というジャンルについての正確な貿易データはありませんでした。

つまり政府は、データもないのに輸出を国策として促進すると言っているのです。
これでは、その成果を判断したり、評価することができません。
「コンテンツ立国」なんて旗を振る割に、実情はお寒い限りです。
経済産業省などは、手を打とうとしているようですが…

コンテンツ振興政策には、経済的側面と文化的側面があり、
表現の自由など難しい問題も孕んでいます。
それだけに、やるなら各省庁が手を結んで本気で取り組むべきでしょう。
「データがない」という現状では、政府の本気度をちょっと疑いたくなりますよね。(上野嘉之)

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(1)  |  トラックバック(1)

 

25年ぶりにお会いしました。さて、その人は?

2007/03/13 00:47

 

 第2章で取り上げる章に、「音楽」があります。ゲームやアニメなどとは違い、クラシックからポップスまで実に幅広く、独断と偏見も加わってさまざまな意見が出てくる。「日本の音楽はコンテンツ力がある」「いやだめだ」と百家争鳴。「そもそも、コンテンツ力って何よ」というちゃぶ台をひっくり返すような意見も出る始末。
 「そういうコンテじゃなかったよなあ」と、まとめるのに苦労しております。
 
 読者の方々も、この章については、「私の意見はまったく違うもんね」というケースが増えるかもしれません。

  取材分野はどうしても記者の好みが出てしまうもので、クラシック好きな記者はその分野の識者にご意見を拝聴しにゆき、ロック好きな場合は、そちらの分野の方に近づきます。

 さて、今回の取材で私も、役得的に非常に懐かしい方に取材することができました。お会いしたのは(とはいっても当時は舞台の上で演奏しているのを聞いていただけでしたが)、実に四半世紀ぶり。思わず、「25年ぶりです」と言ってしまいました。
 
 しかし、お話を伺っていると、コンテンツ力の一要素は、持続性、継続性などの時間軸であることを確信いたしました。
 というのも、編集局で動画を見ていたら、「おおっ、知っている知っている」といいつつ寄ってきて、画面を懐かしそうに見入っている、おじさんがかなりいたからです。

 お会いしたミュージシャンは17日付け土曜日の紙面でご紹介する予定ですので、お楽しみに。

 今回につきましては、いい齢をして、かなりミーハーでした。

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(0)  |  トラックバック(0)

アカデミー賞(R)って…そこまでやるか、商標権!

2007/03/11 02:44

 

この10日間ほど、連載第2部の追い込み作業で慌ただしい毎日です。
久々の更新となってしまい、申し訳ありません。

きょう11日付の紙面で、第2部の前打ち記事を掲載しました。
13日からスタートする第2部のテーマは「コンテンツ」。
漫画、アニメ、ゲームソフト、テレビ番組…などコンテンツの力や、
日本のコンテンツを世界展開する方法について考えました。ご期待下さい。

   ◇   ◇   ◇

さて、先日、映画の広告を見ていて、面白い表現に気付きました。
その作品がアカデミー賞を受賞したとアピールしているのですが、
わざわざ「アカデミー賞(R)」<正確には○の中にR>と書いてあるのです。

アカデミー賞」という言葉が登録商標であると強調したいのでしょうが…
はっきり言って、強い違和感を覚えました。

アカデミー賞は、誰もが知っている権威ある賞であり、
商標登録だと強調する必要性は感じられません。
いちいち(R)をつけると、文章が途切れて読みにくいだけです。

主催者としては、アカデミー賞の権威を貶めるような使われ方、
例えば『B級映画のアカデミー賞』『ポルノのアカデミー賞』といった
不都合な流用を避けるために、商標登録をアピールしているのでしょう。

しかし、そのような事例が好ましくないとしても、
仮に事例が起こった場合に対処すれば良さそうなものです。
予防措置のためにいちいち(R)をつけさせるのは、
少なくとも読み手に不親切ですし、日本の言語文化にもなじみません。
※そもそも(R)という表記は、日本の商標法の規定にはないそうで、
アメリカ流のやり方と言えそうです。

このアカデミー賞への(R)は、文責者が好んで付けたとは思えません。
恐らく賞の主催者(あるいは権利者)が表記を求めているのでしょう。
ネットで「アカデミー賞(R)」と検索した結果、そのように表記しているのは、
広告やPR記事の文章に限られているようです。

ただ、この論法でいくと、「○○賞受賞!」などとPRする文章には
すべて(R)を付けるべきなのでしょうか?
例えば「産経新聞が新聞協会賞(R)受賞」とか、
イザ!がWeb of the Year(R)新人賞受賞」とか、
芥川賞(R)を受賞した綿矢りささんのサイン会」とか…

もちろん、今は賞の主催者がそんなことを要求していないのですが、
もしそんな時代がやってきたら、権利ばかりを主張されているようで、
何とも世知辛いですよね。

知的財産を守ること、守らせることは大切ですし、
例えば、デザインされたマークなどに(R)を付すことは理解できるのですが、
言語文化を乱すような濫用は、再考の余地があると思います。

カテゴリ: ビジネス  > その他産業    フォルダ: 指定なし

コメント(6)  |  トラックバック(1)